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幻のD-38試作戦車

少し前にホビーボスから84517:ソビエト D-38 砲兵戦車ってのが出ました。

D-38は、当初機銃しか装備していなかったBT-2の近代化策の一つとして「76mm PS-3戦車砲」を装備した新型砲塔の搭載を試みた車両。1932年1月に完成して試験が実施されたが、諸々の事情により正式採用には至らなかった。
砲塔はやはり同時期に試作されたT-26に搭載されたA-43砲塔と同じもので、部分プレス製のドーム型(逆馬蹄形)のタイプと、溶接製で八角形のタイプの2種類の砲塔が製造された。今回キット化されたのは八角形のタイプ。

D-38の八角形砲塔は写真が2枚知られていて、それは下の2枚。左の、斜め前からの写真はホビーボス・キットの箱絵の元にもなっている。

Btd38_01

ところがっ!である。私も最近まで知らなかったんだけど、この写真には問題があるのです。まずは下の写真。

Btd38_02

D-38とBT-2だけど、車体の状態、履帯の位置、地面に落ちる影等々、どう見ても同じ(画像の横方向の圧縮比が若干異なっているが)。
このD-38写真は、BT-2の砲塔部分をすげ替えたものだった(!)らしいのですよ。

で、砲塔はというと下写真のようにT-26に搭載されたA-43砲塔の写真から持って来ている模様。

Btd38_03

そう思って写真を見直すと、D-38の方は車体と砲塔のパースにやや違和感があるし、砲塔後半部がやけに高くなっている。また、T-26に搭載されたA-43砲塔では砲身の影が車体に落ちているのに、D-38ではそれが無いのも不自然かなと。

ではD-38の横方向から写したもう一枚の写真はどうかというと…

Btd38_04

このように、やはり車体はBT-2の写真から、砲塔はT-26に搭載されたA-43砲塔の写真から持って来て合体させたものなのでした。
ということはつまり、D-38の八角形砲塔の実際の姿は今のところ明らかになっていない(!)んじゃないだろうか。ええ〜!

T-26に搭載されたA-43砲塔の方の写真は実際に撮影されたものだし、他にも写真が残っている。一方、D-38もプロジェクト自体の記録は残っているので、実際に製造はされたとは思うけれど、その真の姿は現時点では幻になってしまったわけですね。

なお、これらの「修正写真」はフォトショップ等で最近作られたものでは無く、少なくとも50年位前の書物には既に存在しているのだそう。車両製作当時の記録用か、戦後間もない頃の教材用に作られた…とかなのかな。

(掲載写真は全てアルマダ刊『BT戦車』より)

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