KV重戦車のフェンダーについて(1)試作型,L-11 搭載型,F-32 搭載型
▪️ KV重戦車の車体フェンダーは、長方形の鉄板と補強用のL字レール部品、そしてフェンダーステイから構成される。
構造は下の図が把握し易い(フロントヴァヤ・イリュストラツィア誌に掲載。この図自体は工場等のオフィシャルなものでは無い)。
このうち「❶ フェンダー外側の補強レール」と「❷ 車体側のレール」について、それらの接合がリベット留めによるものなのか、或いは溶接留めなのかという問題について調べた。
…のだけれども、結果としては良く分かららららなかった。というか途中で挫折してしまった…。
作業としては、写真からリベット或いは溶接跡の有無を確認するだけなのだが、まずもってリベット自体が小さくて判別は困難。外側のものはレール立上がりの内側に位置する為に見え辛く、車体側のものはフェンダー上に積もった砂礫等で埋まっていることが多い。
Web上で見られる(多くはebay由来の)画像ではそもそもの解像度が低く、かといって書籍掲載の写真を目を細めて見ても印刷の網点に紛れてしまう。なかなかに難儀な代物だ。
そのため本稿では、かろうじて採取出来た標本写真をサブタイプごとに例示し、大雑把な傾向を予想するに留めたい。
以下は多くの写真の中からたまたまサルベージ出来た標本であり、当然ながら、それらをもってそのサブタイプ全体の仕様を決定付けるものでは無い。
リベットが確認出来たからといって溶接留め仕様が無かったとは言えないし、その逆もまた然り。更に両者が混在していた可能性もまた有り得る。
従って「あぁ、リベット留めも(溶接留めも)あるんだな」位の温度で、何らかの参考にしてもらえれば幸いだ。
▪️【試作〜増加試作〜丸型溶接砲塔搭載車】:1939年8月に試作第1号車(U-0)製造、その後1940年4月〜夏頃までに製造された。
◎ KV-1の試作型,増加試作型,丸型溶接砲塔搭載車に於いては、リベット、溶接跡ともに明確に視認できる標本写真は見つけられなかった。リベット「のよう」に見える写真もある一方で、相当に拡大してもリベットが確認出来ない写真もあり、現段階では何とも言えない。
ただこれは次々回に提示するが、「MT-1砲塔(KV-2初期型の砲塔)」を搭載した U-3車台でリベットが確認出来るので、同時期の試作車台でもリベット留めが存在した可能性は高いのではないかと思う。
▪️【KV-1・L-11 搭載型】:1940年夏頃〜年末頃までに製造された。
◎ L-11 搭載型の初期生産車で、砲塔リング部が低く、主砲防盾が鋳造一体型で、転輪も極初期仕様。1940年の8月〜9月頃に製造された車両と思われる。破損してまくれ上がったフェンダーの外側にリベットが確認出来る。
◎ 現段階では、L-11 搭載型で溶接跡が確認出来る車両の写真は見つからなかった。
▪️【KV-1・F-32 搭載型】:LKZにて1941年1月〜10月まで、また、ChTZにて1941年3月〜8月までに製造された。
◎ F-32 搭載型の初期生産車。砲塔後部に旧タイプの機銃マウントを装備しており、1941年1月〜2月にレニングラードのキーロフスキー工場(LKZ)にて製造された車両と思われる。破損してまくれ上がったフェンダーの外側にリベットが確認出来る。
◎ 現段階では、同仕様のKV-1で溶接跡が確認出来る車両の写真は見つからなかった。
◎ F-32 搭載型。標準的な仕様で、1941年上半期に製造された車両と思われる。フェンダー最前部にリベットが確認出来る。
◎ 現段階では、同仕様のKV-1で溶接跡が確認出来る車両の写真は見つからなかった。
◎ F-32 搭載型で、砲塔及び車体に増加装甲をボルト留めしたタイプ(所謂エクラナミ型)であり、LKZにて1941年6月に製造された車両と思われる。フェンダー外側レール下端に断続的に溶接跡が確認出来る。
◎ 現段階では、同仕様のKV-1でリベットが確認出来る車両の写真は見つからなかった。
◎ F-32 装備で第371工場製・簡易生産型砲塔を搭載。戦闘室前面右側に火炎放射器ATO-41を装備した所謂「KV-6」で、1941年8月にLKZで4両製造されたうちの1両。オリジナルプリントを極限まで拡大してもリベットは確認出来ない。従って溶接留めの可能性が高いと思われるが、溶接跡自体は未確認。
参考文献:
『クリム・ヴォロシーロフ:レニングラードでの製造 1940-1941』(マクシム・コロミエーツ 著:フロントヴァヤ・イリュストラツィヤ 01/2009)
『КВ-1』(Wikipedia ロシア版)https://ru.wikipedia.org/wiki/%D0%9A%D0%92-1
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