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“将軍の”T-34:RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車(2)

前回書き忘れたが、先の【パンター転輪をフル装備したT-34-85】の車両は、いわゆる「クロスジョイント砲塔(cross-jointed style casting Turret)」を搭載している。

他の一般的なT-34-85砲塔では鋳造分割線が砲塔の下方、ターレットリングに近い部分に在るが、「クロスジョイント砲塔」では鋳造分割線が砲塔中央部分を十字に走っているのが特徴で、判別は容易い。もちろん、バラバラの砲塔本体をこのラインで「ジョイント」させている訳ではなく、あくまで鋳造型の方の分割線だ。

この「クロスジョイント砲塔」は、ハリコフの第75工場が製造し、第112工場に供給したもの…とされている。
第75工場はハリコフでV-2・ディーゼルエンジンを製造していたが、独ソ開戦に伴い1941年にウラル地方へ疎開。ニジニ・タギルにて第183工場に、またチェリャビンスクにてキーロフスキー工場傘下に組み込まれ、戦車製造に携わって来た。
1943年8月、赤軍によってハリコフが奪還されると、第75工場は段階的にハリコフに帰還して工場の再建が進められた。「クロスジョイント砲塔」は1944年春頃から鋳造が開始され、第112工場に供給されたという。

「クロスジョイント砲塔」には初期仕様と後期仕様があり、後期仕様は(第183工場製砲塔のように)砲塔側面の最突出部が三角形に面取り(平坦化)されている。【パンター転輪をフル装備したT-34-85】の車両はこの面取りの無い初期仕様だ。

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一般に、高出力な無線機を搭載した「指揮戦車」の類いでは、それに対応した送受信アンテナが、しばしば外見上も目立つ形で装備される。
しかし【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】の場合、一見した所ではそのようなアンテナが見当たらない。そればかりか逆に、T-34-85の通常型では砲塔の車長用キューポラ左前方に設けられている筈のアンテナ(及びアンテナベース)が撤去されているように見える。アンテナは何処へ消えたのか?

下は、ほぼ同じアングルから見た「クロスジョイント砲塔・初期仕様」の比較。通常見られるキューポラ前のアンテナ及びアンテナベースが【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】では無いのが判る。

112_rsbf_01

また、下も「クロスジョイント砲塔・初期仕様」だが、やはりアンテナ及びアンテナベースが無い。前方からの写真を見ると、砲塔左側に立っている兵士は左足を「発電機用排気管の装甲カバー」に乗せているようで、つまりこの車両も【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】であろう。

112_rsbf_02

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さて、【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】に関する情報は少なすぎるので、ここで戦後に生産されたT-54K 指揮戦車について見てみたい。

【T-54K 指揮戦車】は【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】のコンセプトを引き継ぎ、T-54・1951年型をベースにして、1951年から1955年まで、合計215台が製造された。搭載無線機はRSB-Fの改良型である「RSB-T(RSB-F-3T)」型であった。

【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】と同様、無線機に電源を供給する為のバッテリーと、充電用のガソリンエンジン式発電機が内装された。発電機は操縦手席の後ろに設置され、RSB-T無線機本体は、戦闘室右前方の弾薬を撤去して搭載された。
アンテナに関しては「10メートル高の折り畳み式ホイップアンテナ」及び「4メートル高のホイップアンテナ」の2種が用意され、前者は車両の駐車時に展開され、後者は駐車時&進行時に装着使用された。電話(音声通信)の場合、通信範囲は、10メートル高アンテナで35〜40km、4メートル高アンテナで10km。電信モードでは、10メートルアンテナで通信範囲は30〜100kmであった。

【T-54K 指揮戦車】では、このように「無線機本体は戦闘室(車体)右前方に搭載」「アンテナはホイップアンテナを使用」と判明したので、ここから逆に遡って、車格が同等で、無線機も同系列である【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】に於いてもこれに近しい仕様ではなかったかと仮定し、「車体右前方にアンテナベースのあるT-34-85」を探してみると…。

ポツポツとその存在が確認出来る。例えば下の車両。

112_rsbf_05

第112工場製車両で、1944年後期仕様の砲塔を搭載しているが、車体右前方にアンテナベースが確認出来る。
この位置にアンテナベースが在るのは、第112工場製車両では1944年春頃まで、砲塔の形式ではD-5Tを搭載した車両、及び同砲塔にS-53を搭載した車両までなので、1944年後期仕様の砲塔を搭載したこの車両にはイレギュラーな装備だ(車体右側面に沿って、長い竿状の物も見え、もしかしたら駐車時用のアンテナかも?)。
また、やや不鮮明だが、砲塔のアンテナ及びアンテナベースも無いように見える。隣奥の車両(クロスジョイント砲塔・初期仕様)ではアンテナもアンテナベースも視認出来るので、それより手前の当車両で見えないのは、やはり撤去されている為ではないか…とも思える。

当車両を反対側から撮った写真があれば、そして車体側面に「発電機用排気管の装甲カバー」が確認出来れば、「【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】は車体右前方にアンテナベースが在る」と確定するのだが、残念ながらそのような都合の良い写真は無い。

有名どころの写真では、第112工場製車両で、やはり1944年後期仕様の砲塔の「ヴラジーミル・マヤコフスキー」号。「発電機用排気管の装甲カバー」が在り、砲塔のアンテナ及びアンテナベースが無い【RSB-F無線機搭載・T-34指揮戦車】なのだが、車体右前方にアンテナ???様の物が写っている…???のだが、背景の何かがそう見えている…という可能性もあり、やはりこれも確定とは言えない。

112_rsbf_06

隔靴掻痒である。

<その3に続く>

◎ 参考資料・画像出典

『未知のT-34』:エクスプリント刊, 2001.
『国内の装甲車両・20世紀 第2巻 1941-1945』:エクスプリント刊, 2005.
『国内の装甲車両・20世紀 第3巻 1946-1965』:ツァイガウズ刊, 2010.
『T-34 最初の完全なる百科事典』:ロシア・ヤウザ,エクスモ,ストラテギヤКМ刊 2009.
『チェーフニカ・イ・ヴァアルジェーニエ(技術と兵器)誌:2010/05』

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