« ZVEZDAが【ソ連自走砲 SU-122】を開発中 | Main | ZVEZDA・2020年カタログ »

パンター転輪をフル装備したT-34-85

◆ 最近webで見て思わず「うわぉえ!?」と声が出てしまったのが下の写真。
第112工場製のT-34-85…である。転輪はパンターから流用された転輪…である。それも!片側全てがパンター転輪であーる!
画像出典はココ。個人蔵のアルバムに眠っていた写真らしい。戦後75年を迎えようとする現在に於いてもなお、こんな写真が発掘されるんだよねぇ。

T34_tv_katki_01

パンター転輪を装着したT-34系車両の写真は幾つか知られているけど、それらは通常のT-34転輪と混ぜ履きにしており、パンター転輪は第2転輪以降にせいぜい片側2個の装着だった。そのため何となく「パンター転輪は補助的役割だったんだろう」というイメージが強かったのだが、片側全て装着(恐らくバランス的に反対側も同様と思われ、つまり全ての転輪がパンター転輪だろう)車両の存在が確認されたということで、また認識が変わって来る。あまりに自然すぎて一瞬見過ごしたよ…。

この「パンター転輪を装着したT-34系車両」については以前他所に書いた事があるので、その内容を以下にまとめ直してみます。

◆ ロシアの戦車雑誌『タンコマステル 04/2002』マクシム・コロミエーツ氏の記事によると、この「パンター転輪を装着したT-34系車両」についての情報はやはり限定的で、そのアイディアが発案された経緯や、発案者、また実際に何両が存在したかなど、諸々の詳細は現時点では明らかになってはいない。
野外デポのような場所で修理中の写真が知られているが、これは1944年から1945年の冬に掛けて第4移動式戦車修理工場にて撮影されたものとされる(下写真)。

T34_tv_katki_02

移動式戦車修理工場(PTRZ)と聞くと部隊付属の小規模なデポを想像しがちだが、実際は(個々の工場毎に規模の差はあるが)大戦終盤には人員数500〜2,000名近くを擁しており、前戦の後方を部隊と共に移動し、戦車エンジンやトランスミッション,電気機器,各種デバイスの修理,摩耗部品等の製造及び修復,またそれらを実行する為の資材,人員,電源等の確保や、インフラの整備までをも担っていた大規模な組織であり、まさに移動する工場と言うべきものであった。

改造に使用されたパンター転輪は、戦闘で撃破&鹵獲した車両から取り外したもの…ではなく、解放占領した地区の工場または倉庫からスペア部品として大量に押収されたものである可能性が高いとされる。

また、文献資料的には、クビンカ実験場に於いてT-34-85のT-V戦車転輪の試験("T-V戦車"はパンターのソ連側呼称) 』と称する実証試験が行われた記録があり、1945年3月23日〜4月10日まで、604kmに及ぶ走行試験を含む各種の試験が行われたという。
試験はT-34-85の純正転輪との混合(混ぜ履き)にて行われたが、パンター転輪には負荷による破損も生じ、最終的に「パンター転輪は純正のT-34転輪より信頼性は低いが、軍修理ユニットにて交換使用は可能である」という結果が出された。
なお、この実証試験は先の「第4移動式戦車修理工場」の上申によるものである可能性が高いとされる。

先の「第4移動式戦車修理工場」にて撮影された写真が1944年〜1945年の冬で、その後、実証試験によって交換部品としてのお墨付きを得、ある程度の数の「パンター転輪を装着したT-34系車両」が誕生した。そして中には冒頭の写真のように「全転輪をパンターのものに換装したT-34」も存在した…という事だったのかもしれない。

◆ さて、あらためて冒頭のT-34-85写真だが、んん…? パンター転輪としては何かちょっと違和感がある…? 良く見るとハブ周囲にあるボルトの数が多いのだ。
今まで知られて来た「パンター転輪を装着したT-34系車両」では、ハブ周囲のボルトは6個だった。これは上の「第4移動式戦車修理工場」にて撮影された車両でも確認出来る。
元々、パンターのこの部分のボルト数は8個なのだが、T-34のハブに装着させる為にボルト穴を開け直し、6個装着に対応させている。この辺の事は hn-nhさんのブログに詳しいので参照されたい(URL : https://hnnh3.exblog.jp/26738672/)。
最近 Miniarmから出た【35114:"Panther" Wheel Set for T-34】は、この「ボルト数8個→6個転輪」を再現したものだ。

冒頭のT-34-85でもハブ取付け用のボルトは6個なのだが、その外周、ちょうど皿形に傾斜が始まるその境界辺りに、新たなボルトがグルリと10個装着されているように見える
元々のT-34用・皿形転輪では、表側(外側)と裏側(車体側)2枚合わせにした転輪の相互接続を補強する為、ハブ部のボルト6個の外周に接続用ボルトが10個用いられているのだが、このパンター転輪はそれに準じた仕様としているのだと推測出来る。これは今までに確認された物とは異なる新しい仕様だ。

T34_tv_katki_03

下は、手持ちの画像からチャッチャッと作ってみたもので、元のパンター転輪と、T-34/パンター転輪の推定ボルト位置。大凡このような感じになったのではないか。スペース的にもかなりギリギリで、場所によってはボルト同士がかなり接近しており、もしかしたら若干小振りのボルトを使用した…というような事もあったかもしれない。
このタイプの転輪は、暫定的にT-34/パンター転輪・ボルト増設型と呼称してみたい。

T34_tv_katki_04

◆ 模型的には「パンター転輪を装着したT-34系車両」って割と人気アイテムなので、まぁ自分で作らなくても良いかな…とか思ってたけど、こういう写真が出て来ちゃうと俄然興味が湧きますな。「事実」は斯くも面白い。

なお、冒頭写真のT-34-85、車体戦闘室の側面(第3転輪の上あたり)に車体後面に付くのと同じ「装甲排気管カバー」の装着が確認出来ますね。コレについては次回書いてみる予定。

◎ 参考資料

『タンコマステル 04/2002』マクシム・コロミエーツ
『T-34:最初の完全なる百科事典』ロシア・ヤウザ,エクスモ,ストラテギヤКМ刊 2009.
『国内の装甲車両・20世紀 第2巻 1941-1945』: エクスプリント, 2005.

|

« ZVEZDAが【ソ連自走砲 SU-122】を開発中 | Main | ZVEZDA・2020年カタログ »

モケー」カテゴリの記事

コーショー」カテゴリの記事