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Zebrano 1/35【45mm 対戦車砲 M.1941 “レニングラートカ”】

Zebranoは、主に1/72を中心にソ連の「他では出さないような」アイテムを精力的に出しているベラルーシのメーカーですが、この度、満を持して1/35のインジェクション・キットに参入。
その第一弾が35001:ソ連 45mm 対戦車砲 M.1941 “レニングラートカ”だということで、こいつはもう取るものも取りあえず購入した次第。

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■ 45mm 対戦車砲 M.1941 について

独ソ開戦後の1941年7月、ドイツ北方軍集団がレニングラードに迫る状況の下、市の防衛の為に「レニングラード国民民兵軍(LANO)」が組織される。
しかし赤軍は独ソ開戦初手で大量の装備を失っており、LANO向けに装備を割譲する余裕は無く、市内にある旧式の大砲や銃器がかき集められたものの、火砲類の不足は深刻だった。
そんな折、市内複数の工場から、総計1,500門以上の「45mm 戦車砲 M.1932(20-K)」が発掘される。これらはT-26やBT戦車等から取り外されたもので、1940年に行われた装備の修理及び更新計画に基づき、再利用の為に溶鉱炉で溶かされる予定にあるものだった。
(「45mm 戦車砲 20-K」自体は1943年まで製造が継続されているが、発掘されたのは改良型の「M.1932/38」型では無く、初期タイプである「M.1932」型だったと推察される)

これらの砲を修理の上、新たな砲架に搭載して対戦車砲を製造する計画が発動し、結果採用されたのが45mm 対戦車砲 M.1941である。

搭載砲は「45mm 戦車砲 M.1932(20-K)」の他、トーチカ砲バージョンである「DOT-4・45mm砲」も使用されている。
砲架は脚と一体型の箱形構造で、砲の左右旋回は制限されたが、照準時の微調整として砲架全体を水平移動させることが可能だった。
防盾は正方形に近い単純な形状、車輪にサスペンションは備えられていなかった。

45mm 対戦車砲 M.1941 は1941年8月から製造開始。レニングラートカという愛称で呼ばれ、最終的に合計 651門が製造され、兵器不足に苦しむ中、1944年中頃まで同市の防衛に寄与した。

この手の兵器の常で、主として資材の供給不足から、製造時期により各部には細かな差異が見られる。
特に車輪は慢性的に不足しており、基本は「76mm 山砲 M.1938」のものが流用されたが、「45mm 対戦車砲 M.1937(53-K)」用のスポーク車輪の他、帝政ロシア時代の「ローゼンベルグ 37mm トレンチガン M.1915」「76mm 山砲 M.1904」といった砲用の木製スポーク車輪から、果ては荷馬車用の車輪までもが装着されたという。
また、照準器も不足しており、20-K用照準器の代用として「小銃用の狙撃スコープ(!)」を装着したものも存在した。

現在、3門の「レニングラートカ」の存在が知られている。モスクワ郊外・パジコヴォのロシア軍事史博物館,サンクトペテルブルク砲兵博物館の裏庭,そしてフィンランドのパロラ戦車博物館。フィンランドは1941年6月から1944年9月のいわゆる「継続戦争」期間中に4門の「レニングラートカ」を鹵獲し「45К/41 psv」と分類したのだそうだ(運用したかどうかは不明)。

■ Zebrano キットについて

パッケージは 165mm x 260mm。到着したものは箱がボコボコにダメージを受けていたが、コレは良いのです。私は発売直後に購入した為「パッケージが揃ってないんで来週になるけどどうする?」と訊かれたので「んじゃパッケージは要らないから本体だけ送って」と頼んでいたのでした。キット本体はパッケージの中で更に梱包されていて無事。

キット内容は ZebranoのHPにパーツ&インスト&完成見本が上がってるので参照のこと。
https://zebrano-model.com/en/armor-plastic-kits-1-35/35001-45-mm-gum-1941/

プラ・インジェクション製の本体に、防盾や砲架の桁部分等、薄さの目立つ部分にエッチングパーツ、車輪のタイヤと防盾用のリベットがレジン製という構成で、適材適所というか理想的な構成かと思います。
ランナーのタグにはうっかり(?)「1:72」とモールドされちゃってますね。インストにも「1/72」とか書かれてたりするけど、無論、内容はちゃんと1/35です。

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プラ部分のモールドのキレは正直言って今一つ。Miniart最初期のキットである「76.2mm 師団砲 ZiS-3」あたりと比べても繊細さではやや劣るかな。プラの厚くなった箇所にはヒケが散見されたりも。雰囲気的に、少し前の UMや ACEといったウクライナ系の1/72・AFVキットのモールドに近い印象。
うおぅ!?とある意味感心したのが 45mm砲口部で、カラー部にイモ付けで砲口も開いていないというプリミティブさが逆に新鮮。「砲口?そういうのはあなた方が開けるものでしょう?」と言わんばかり…な?
実際問題としては、このキットを買う様な人の家には「45mm 戦車砲 20-K」のパーツなど幾らでも余ってるので(断言)、砲口部、或いは砲本体をそこから流用しても良いし、アルミ砲身を奢ってやるのも良いでしょうね。

エッチングは、特に防盾がエッチング製なのが良。ここが分厚いプラ製だとちょっと萎えるからねー。
ただ、組み立ての初っぱなからいきなり「エッチングの防盾に0.4mmの穴を16個開けてリベットを植えましょう」とか指示があって途方に暮れる。いやソレ無理だよ…。穴開けといてくれよん。

レジン製のタイヤは先述したように、「76mm 山砲 M.1938」から流用された「5.50х19」サイズのものを再現しており、CG原型らしくモールドもなかなかのもの。
何より、戦時中に一般的な「ヤロスラヴリ・ゴム工場」製の直線的なトレッドパターンではなく、レニングラートカで多く見られる「ダイヤ型が連なるパターン」を再現しているのが素晴らしい。これはレニングラードの赤い三角形」ゴム工場製のタイヤパターンであり、このサイズ(5.50х19)では初ではないかな。
この「赤い三角形」タイヤを装着しているという事がもういかにも「レニングラード封鎖下の兵器」って感じで萌えるよね。え?別に萌えない?

ただし、残念な事にレジンの成形があまり良ろしく無い。
ロットによって差が出そうな部分だが、私の入手した物はタイヤ裏面がやや荒れていた。またゴム型も一部でズレており、トレッドのモールドを残しつつこれを成形するのはちょっと難しいかも。どうすっかなー。状態の良い表側部分を生かしてニコイチした上で複製する…か?

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製品のスケールモデルとしての正確性だが、これは良好と言って良さそう。
キットはロシアの模型雑誌『Mホビー』誌・No.06/2018に掲載された、セルゲイ・ヴォイツェホビッチ氏による記事・図面を元に作られていると思われる。同氏の記事は評価・信頼性が高く、それをベースとしているならば基本は大丈夫かと。まだ大まかにしか検証していないが、パーツ寸法は同図面に合致している。

実は Zebrano、1/35に先駆けて1/72でも同じ「レニングラートカ」のレジンキットを出しており、同キットを検証したモデラーによればやはり『Mホビー』誌の図面をベースに製品化されているのだそう。出来に対する評価も高いようで、1/35もこれを踏まえた出来になっているんじゃないかな。

当キットは本体がプラ・インジェクション製な訳だけど、「土日で完成させて君もボクもハッピー」的なキットでは、無い。何しろいきなり「エッチングに0.4mmの穴を16個開けよ」と強いて来るのだから…。アイテム的にも内容的にも、マス向けの「プラモデル」というよりは「ガレージキット」であると捉えた方が良いでしょう。
ストレートに組むのもそれなりに大変そうだけど、資料を元に手を入れれば、愛すべき小品として輝く素質を持ったキットだと思う。色々と書いたけど、現在、私の頭の中は本キットの事で一杯だったりしますよ。もう一個買おうかな。

Zebrano、この路線で赤軍の火砲類を出し続けてくれると嬉しいですな。

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◎ 参考資料

『レニングラートカ』ミハイル・スヴィリン:ポリゴン・No.02/2000.
『封鎖下の45』セルゲイ・ヴォイツェホビッチ:Mホビー・No.06/2018.
『パロラ戦車博物館の 45mm 対戦車砲 M.1941 “レニングラートカ”』https://www.dishmodels.ru/wshow.htm?p=1971

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